これは、資金200万円から始まった、
ひとりの投資家の記録。
試行錯誤を繰り返しながら、
やがて1億円へと辿り着くまでの、
相場の軌跡である。
投資遍歴 第五章【前編】
‐ 相場から逃げ出した日
熱狂のあと
アベノミクスの熱狂ののちの、2014年。
この年の相場は、指数の数字だけをみると、
「それほど悪い年」には見えないだろう。
だが、実際に市場の中にいた人の体感は、
まったく違っていた。
年が明けると同時に一気に空気が変わり、
前年までの熱狂が嘘のように冷えていく。
そんな状況から始まった年だった。
地合いの悪化
まずこの年は、
税制が大きく変わった年だった。
証券税制の改正により、
株式譲渡益、配当収入の税率は
10%から20%へ。
そして4月には、
消費税が5%から8%へ引き上げられる。
前年の暮れ頃のニュースでは、
これは「織り込み済み」と言われていたが…
市場は、そんなに器用ではなかった。
特に、この年の前半の
新興市場の冷え込みは深刻だった。
マザーズ指数は
年明けから5月にかけて、
1000ポイントから650ポイントへ、
わずか5か月で、35%もの下落をみせる。
2013年の歴史的な上昇相場を
体験したばかりの投資家たちにとって、
まるで底の見えない斜面を
転がり落ちていくようなこの下げは、
想像以上にこたえた。
吹き上がったところで買い、
底を割って投げる…。
そんな取引が、
市場のあちこちで繰り返されていた。
難解だった年
それでもこの年の10月には、
日銀による大規模な追加金融緩和、
いわゆる「黒田バズーカ」が放たれる。
そこから相場は、
再び強い上昇の流れに乗っていった。
そして結果的には、
年末時点の日経平均やTOPIXは、
前年比では、上昇していたのだが…
この年を振り返るとき、
多くの投資家が口を揃えて言う。
「2014年は、難しかった」と。
熱狂相場の残像
ここからは、
私自身の相場の歩みを綴りたいと思う。
2013年。
私は、はじめて「相場の春」を体験した。
歴史的な上昇相場により、
投資資金は、年初の220万円から、
一気に480万円へ。
興奮冷めやらぬ、そんな状態のまま、
2013年を終えたのだった。
だが…そのときの
“熱”はあまりにも強すぎて、
「冷えた空気」を感じ取ることに、
鈍くなってしまっていた。
迎えた2014年。
相場の空気は、
年明けから一気に冷たいものへと
変わっていった。
だが、私の目には、
まだ2013年の残像が焼き付いたままの状態。
下降トレンドに入っている銘柄を
「そろそろ反発するはずだ」と買い、
一瞬の戻りで安心はするものの、
結局は底が割れて投げる。
同じ失敗を繰り返しながらも、
空気が変わっていることに、
ずっと気が付かないままだった。
そしてその結果、
年初にあった480万円の資金は、
4月には、300万円前後まで
萎んでしまっていた。
相場から逃げ出した日
「このままでは、
2013年に得た利益を全て失ってしまう。」
そう感じた私は、度重なる失敗ののち、
“トレード恐怖症”になってしまっていた。
チャートを開いては閉じ、
マウスを握ったまま、
指先が“クリック”の手前で固まってしまう。
そんな日がしばらく続いたのち。
私は失意の中、ひとつの決断を下した。
それは、
「いったん、相場から離れる」こと。
2014年の5月。
その月は、私は一切の売買をしていない。
もしかしたら…この世界には、
もう戻ることはないかもしれない。
そう思わせるほどの絶望の淵にいた、
2014年の春だった。
――【後編】へつづく。
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