AIが仕事を奪う未来 ‐そのとき、人間の居場所はどこにあるのか
フィジカルAIが開発された、
未来のお話を考えてみました。
“みんなを助けるはずだった存在”
が世界を変えてしまった、
そんなお話です。
時は2035年。
その年の冬、広告の一面には
大きな文字が躍っていた。
「完全自律型AI《ORACLE》発売へ」
もちろん、アニメに出てくるような、
ロボットではない。
だが、なんでもこなす万能AI…
時に医者、時に弁護士、時に家庭教師。
そして会社経営すら肩代わりする、
いわば、「現代のドラえもん」
人々は言った。
「これで、もう働かなくても
いい時代になるのか」
…そう信じていた。
少なくとも、“その時”までは。
仕事が、なくなった
郊外の小さな家の
窓際のテーブルに座りながら、
ひとりの男性は、
コーヒーを見つめていた。
「仕事が、なくなったな…」
彼は配送ドライバーだった。
だが《ORACLE》の普及で、
配送・仕分け・経路管理…
すべてをAIが担当するようになった。
効率は上がった。事故は減った。
会社の利益も増えた。
ただ…
人間の居場所だけが、小さくなっていった。
“持つ者”と”持たざる者”
《ORACLE》の本体は高額で、
月額利用料は、
一般家庭の収入の半分ほど。
最初に手に入れたのは
大企業、富裕層といった、
一部の人たちだけだった。
ORACLEを持った人々は
どんどん豊かになるが、
ORACLEを持てなかった人々は
職を失い、生活のレベルも落ちる一方。
いつしか社会は、
「ORACLEを持つ者」と
「ORACLEを持たない者」とで
分断されていった。
皮肉にも、
“みんなを助けるはずの存在”が、
分断を生んでしまっていたのだ。
便利すぎる世界の”ほつれ”
AIが稼ぎ、AIが判断し、AIが管理する。
便利すぎる世界は、気付かないうちに、
決定的な弱点を抱えていった。
「消費する人がいなくなること」
多くの仕事がなくなった結果、
人は働かず、稼げなくなり、
生活費は「最低限の給付」
だけの人が増えた。
その結果…
消費が減り、多くの小売店が潰れ、
生産ラインも次々に停止した。
AIを大量に抱える企業も、
市場そのものが縮んでいくなかで、
利益を出せなくなっていった。
…便利さの果てに、
この世界は、ゆっくりと止まり始めていた。
人間の居場所はどんな形に…
ある夜、娘がぽつりと聞いた。
「パパ、なんでお仕事ないの?」
娘の問いに、
彼はしばらく言葉を探したが…
結局、なにも言えられなかった。
窓の外では、
AIが操る配送ドローンが
規則正しい音を立てて、
ゆっくりと空を横切っていく。
便利になったはずなのに、
豊かさを感じない世界。
そのドローンの影を見つめると、
胸のどこかが、ひんやりと
冷たくなった気がしたのだった。
――
万能なAIがやってくる未来。
そこに残された“人間の居場所”は、
どんな形になっていくのでしょうか。
希望を感じる人もいれば、
どこか胸騒ぎのようなものを
覚える人もいるでしょう。
その行き先が、光なのか闇なのか。
それは今はまだ、
誰にも分からないのだと思います。
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