投資の損益通算制度の、少し怖い話│
利益ゼロでも税金だけ払うことがある?
【税理士でもある著者が、
実務経験をもとにやさしく解説】
株や投資信託で利益が出たときに、
「税金がかかる」ということは、
多くの方がご存知だと思います。
でも、この税金の仕組み、
状況によっては、少し怖いことになることも。
たとえば、利益は出ていないのに、
なぜか税金だけ大きく取られている。
そんなことが、
現実に起こり得るのです。
今回は、株の損益通算制度について、
少し整理してみたいと思います。
※この記事では記事の複雑化を避けるため、
税率は20%で計算しています。
(実際は20.42%です。)
損益通算の罠(1):損益通算は、「順番」で結果が変わる
まず大事なのは、損益通算制度は、
「利益になる年度」と、「損失になる年度」の
順番によって、結果が大きく変わる
ということです。
たとえば、
▶1年目 +1000万円(税金:200万円)
▶2年目 −1000万円(税金:なし)
この場合、2年間を通して見れば、
「利益額はゼロ」です。
でも、税金は・・
1年目の利益に対する税金200万円が、
そのまま負担として残ります。
つまり、
👉️利益はゼロなのに、
税金だけ200万円払っている、
ということが起きるのです。
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一方で、
▶1年目 −1000万円(税金:なし)
▶2年目 +1000万円(税金:200万円→なし)
この場合は、
損失の繰越制度を使うことで、
1年目の損失を、2年目の利益と相殺できます。
したがって、税金はかかりません。
(ただ、どちらの年も確定申告が必要です)
つまり、
同じ「1000万円の利益」と「1000万円の損失」
(トータルでは利益ゼロ)でも、
利益が先か、損失が先か。
それだけで、
結果はまったく変わってしまうのです。
現実には「勝ってから負けて辞める」人が多い
先ほどのお話から、理屈の上では、
「損失を先に出して、
あとから利益を出した方が有利」
ということが分かります。
それでは現実にはどうなのか?というと、
投資においては、
勝っている状態で、すっぱりとやめる、
という人は、ほとんどいません。
大きく負けてしまって、
心が折れてやめてしまう、という人が
ほとんどです。
たいていは先に利益が出て、
すこし気持ちが大きくなって、大きく勝負をし、
結局大きく負けて、嫌になって辞めてしまう。
こういった流れになりがちです。
そしてこの場合は、
最後には「利益」がなくなっているのに、
「税金」は先に出した利益分を払っているので、
税負担が大きいまま終わってしまう、
という事になります。
このあたり、
「株式譲渡所得の税率は20.42%」、
といわれていますが、
実は
「(最低)20.42%、(最大)無限大%」
というのが正しかったりします。
(上述のとおり、利益0でも税金200万円超、
ということもあるので、無限大%です。)
損益通算の罠(2):損失の繰越は3年までしかできない
もう一つ大事なのは、
先に損を出せば、税金で必ず損をしない、
というわけではないのです。
「損失の繰越」の制度は万能ではありません。
上場株式等の損失は、
確定申告をすれば「最長3年間」繰り越せます。
ただし、
・毎年きちんと確定申告をする必要がある
・3年を過ぎると使えなくなる
こういった、決まりがあります。
つまり、損失を出しても、
その後「3年以内」に
十分な利益が出なければ、
損失を利益と相殺することが出来なくなる。
たとえば、
▶1年目 マイナス100万円
▶2年目 利益10万円(税金:相殺で0)
▶3年目 利益10万円(税金:相殺で0)
▶4年目 利益10万円(税金:相殺で0)
▶5年目 利益70万円(税金:14万円)
👉この場合は、
5年間のトータルでの「利益」は0ですが、
「税金」だけ、14万円払うことになります。
こういったことから、
制度としては用意されていても、
実際にはうまく活用しきれていない人も
少なくないのではないかと思います。
損益通算の罠(3):信用取引は、税金リスクも増幅する
信用取引で大きくレバレッジをかけると、
利益も損失も大きくなります。
ということは当然、
損益通算が上手くできなかったときの
税金の負担も大きくなる、ということです。
たとえば、
元手100万円の人が
信用取引で大きく利益を出し、
▶1年目 +500万円(税金:100万円)
▶2年目 −300万円(税金:なし)
こうなったとします。
この場合、
2年間通算では、「利益」は200万円です。
でも「税金」は、
この場合、トータルで100万円支払っています。
つまり、
元手100万円から見れば、
かなり重い税負担が発生している、
とも言えますね。
資金に対して過大なレバレッジをかけると、
税金の負担まで、
想像以上に重くなることがある。
ここは見落としやすい部分だと思います。
損益通算の罠(4):株と先物は損益通算できない
株が下がりそうなときに、
日経平均先物をヘッジのつもりで売る・・
そんなこともありそうですが、
この場合、実は税負担が
とても重くなることがあります。
これも、少し怖いポイントです。
たとえば、
現物株のヘッジとして
日経平均先物を売っていたとします。
その後、大きく相場が下がり、
▶「現物株」は −1000万円
▶「日経平均先物」は +1000万円
となったとします。
この場合、利益的には、
差し引きゼロです。
でも税金上は、
株と先物は損益通算できないため、
▶現物株の損失(税金なし)
▶先物の利益1000万円(税金:200万円)
ということになります。
つまり、
👉️トータルでは利益ゼロなのに、
税金だけ200万円かかる
ということが起きてしまうのです。
※同様に、FXやオプションの損益は、
株の損益と損益通算することができません。
損益通算の罠(5):NISAは非課税だけど、損益通算はできない
NISA口座についても、少し注意が必要です。
NISAは、利益が非課税になる制度で、
これはとても大きなメリットです。
ただし、NISAで損失が出た場合には、
他の口座の利益と
損益通算することはできません。
ここはデメリットでもあるのです。
たとえば、
▶「特定口座」で、プラス100万円(税金20万円)
▶「NISA口座」で、マイナス100万円(税金なし)
という場合。
損益で見れば、プラスマイナス0ですよね。
そしてもしこれが、
どちらも「特定口座」の損益であれば、
利益と損失を相殺できて、税金はかかりません。
でもこの場合は、
マイナスを出したのはNISA口座。
この場合は、損益通算は出来ないため、
特定口座の税金20万円の負担だけが残ります。
これがNISAの落とし穴です。
NISAはとても良い制度ですが、
大きく負ける可能性が高いものを
組み込んでしまうと、
税制上のデメリットが表面化する、
という可能性もあります。
損益通算において気を付けること
ここまでの内容から、
損益通算制度には、少し怖い側面がある、
ということが分かると思います。
ただ大切なのは、
制度の仕組みをしっかり理解した運用です。
たとえば、
👉️できるだけ同じ年の中で、
利益と損失を相殺する。
👉️損失を出した場合は、
繰越のために確定申告を忘れない。
👉️税金の観点だけで言えば、
極力、損失を出したまま辞めない。
👉️NISA口座には、
大きく負けにくい銘柄を入れる。
👉️信用取引で、過大なレバレッジを掛けない。
👉️先物やオプション、FXは、
税制面も含めて考えて運用する。
こういった視点が大切になってきます。
さいごに
損益通算制度については、
正しい知識を持っていれば、
思わぬ落とし穴にはまることもなくなります。
でも…
利益と損失の順番を誤ったり、
税制上異なる分類のものを
組み合わせてしまうと、
予想しない形で、
牙をむいてくる制度でもあります。
充実した投資ライフを
実現するためにも、
税金面で、思わぬ損をしてしまわないように、
したいものですよね。
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