ヒモニートから税理士へ 【第1話】‐人間のクズ、と笑った日

🛋ヒモニートから税理士へ

これは、 社会のどこにも属さなかった20歳の私が、
税理士になるまでの、再生の物語。


ヒモニートから税理士へ 【第1話】
― 人間のクズ、と笑った日 ―


彼は20歳。


社会のどこにも属さず、
名刺もなければ肩書もない。

毎朝目覚めると、
向かう先は決まっていた。

……パチンコ屋。


彼には家と呼べる場所はあったが、
それは自分のものではない。

6歳年上の看護師の彼女の部屋。


優しい彼女に甘え、
転がり込むように居候を続けていた。



ホールに一歩足を踏み入れると…

耳をつんざく電子音と鐘の音。


数字が回るたびに光が瞬き、
当たりが出れば歓喜の音が鳴り響く。

だがそれらは祝福ではなく、


むしろ――

孤独を際立たせる合図のように感じられた。


当時はまだ店内での喫煙が当たり前で、
空気は灰色に淀んでいた。


煙が目に染みるたびに、
自分が社会の外れに漂っているのだと
実感させられる。


ただ..時折雑音の隙間から
かすかに聞こえてくる曲だけが、救いだった。

globe、My Little Lover。


当時流行っていたポップスが、
ほんの一瞬だけ胸を柔らかく包み込み、

「ここではないどこか」
へと心を連れて行ってくれた。



ただし、

彼は「ただ打っている」だけの客ではなかった。


大当たりが乱数方式で管理される完全確率制。

台のスペック、釘の開き、
千円あたりの回転数。


それらを組み合わせれば、
「台ごとの期待値」は瞬時に計算できた。


彼にとってパチンコは、
運任せの遊びではなく、


「確率に基づく投資」だった。


台の前に座ると、

期待値を冷静に計算する自分と、
押し潰されるような孤独感との狭間で、

揺れ続けていた。



毎日のように日銭は入った。

財布の中にはそれなりの現金が入っていたし、

勝ち負けで一喜一憂する人たちとは
一線を画してはいた。


けれど――


社会的にはゼロ。


名もない若者が、
社会の役に立つこともなく、

ただ数字だけを追いかけて、
時間を浪費している。


「俺は人間のクズだな」


彼は自嘲気味に笑った。


その頃の彼には、明るい将来など、
まるで見えてはいなかった。



灰色の煙に包まれたホールで、
打ち込まれ踊る銀玉のように、

ただ無意味に同じ場所を
ぐるぐると回り続ける毎日。


しかし――

のちに彼の人生を大きく変える一言が、

この灰色の時間の中から、
差し込むことになる。

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