コンコルドの誤謬(ごびゅう)
– 飛び続けられなかった、超音速の飛行機
—–
行列に1時間並んだあとで、
「……そこまで食べたかったかな?」
とふと冷静になっても…
せっかく並んだし、と列を抜け出せない…。
つまらない映画を観ながら
「正直もう帰りたい」と思いつつ…
「でもお金を払ったし」「せっかくここまで観たし」
と、席を立てなかった経験…。
投資でも…
「せっかくここまで持ち続けたし」
「今さら売れない・・」
と、売るのをためらったり…。
多くの人が、もしかしたら一度は、
こういった経験があるかもしれませんね。
今日はこういった、
「過去の行動に囚われてしまって
合理的な行動が選択できない」
というお話について、
紐解いていきたいと思います。
コンコルドの誤謬(ごびゅう)とは?
コンコルドの誤謬とは、
行動経済学の用語で、
「過去の行動の結果によって
すでに取り戻せないお金や時間」
を理由に、
「合理的にはやめた方がいい行動を
続けてしまう心理」
のことを言います。
この先どうするべきかは本来、
「これから得られるもの」
「これから失うもの」
で判断すべきなのですが、
この誤謬に陥ると、
「過去に払ってしまったコスト」が、
意思決定に強い影響を与えてしまいます。
お話の由来は ‐ 超音速旅客機「コンコルド」
この心理現象の名前は、
イギリスとフランスが共同開発した
超音速旅客機「コンコルド」に由来します。
1969年に初飛行したコンコルドは、
当時の最先端技術の結晶でした。
・音速の2倍で飛ぶ旅客機
・ロンドン〜ニューヨークを3時間台で結ぶ
・「未来の空の象徴」
まさに、人類の夢そのもの。
しかし・・
この夢は、経済的には「悪夢」として
終わってしまいます。
分かっていた「赤字」
開発が進むにつれて、
次々と現実が明らかになります。
・開発費は当初の想定を大きく超過
・燃費は非常に悪い
・騒音問題で就航できる空港が限られる
・運賃は高く、一般普及しない
関係者の間では、早い段階から
「商業的に成功しない」
ことは分かっていました。
それでも…
このプロジェクトは止まりませんでした。
理由は、
極めて人間的なものでした。
・ここまで投資した資金を無駄にしたくない
・国家の威信をかけた事業だった
・今さら失敗とは言えない
こうして、
「将来の見込み」ではなく「過去の投入量」
を理由に、事業は続けられます。
そして、コンコルドは・・
コンコルドは最終的に、
一度も黒字化することなく運航を続けました。
その後、2000年にはパリでの墜落事故が発生。
安全性への懸念が強まり、
需要はさらに減少します。
そして2003年。
採算改善の見込みはなく、
維持コストは膨らみ続ける中で、
ついに、
コンコルドは、静かに退役しました。
最後に残った教訓
長年続けられた事業でしたが、
最後に残ったのは、
「早い段階から失敗だとわかっていたなら
早くやめておけば良かった」
「もっと早くやめていれば、
損失はここまで膨らまなかった」
という、歴史の教訓でした。
やめられない心理
コンコルドの誤謬は、
「どうしようもないような愚かさ」から
生まれるものではありません。
・努力を無駄にしたくない
・判断ミスを認めたくない
・ここまで来た自分を否定したくない
こういった、
誰もが持っている
「人間らしい弱さ」の裏側から生まれます。
だからこそ、失敗がより大きくなってしまう
のかもしれません。
本当に考えるべき問い
「コンコルドの誤謬」から
距離を取るための「問い」は、
とても分かりやすいものです。
「もし今、ゼロから始められるとしたら、
それでも同じ事を続けようとするだろうか?」
過去に使ってしまったお金や時間は、
判断材料に囚われる必要はありません。
考えるべきは、
「将来の利益を一番大きくするためには
これからどうすれば良いのか」
ということです。
現代にも続く「コンコルドの影」
この「コンコルドの誤謬」は、
歴史上の大きな国家プロジェクトだけでなく、
私たちの日常における、仕事、人生の選択の場面、
そして、投資の場面でも・・
静かに、何度も姿を現します。
なぜなら、この問題は、
「失敗だと分かっていながら、
それを認められなかった」
という、
とても人間らしい、
「誰もが持っている弱さ」
によるものだからです。
だからこそ…
このコンコルドの物語は、
人々の大きな教訓として、
今も語り継がれているのかもしれません。
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